2004年3月26日に社会福祉法人 同仁会さんの職員研修会で「褥瘡(じょくそう)と疥癬について」
という内容でお話しをさせていただきましたので、報告します。
同仁会さんは特別養護老人ホームなどを始めとした介護関連の施設を複数お持ちだということもあり、職員の皆様の褥瘡・
疥癬に対する意識も高く感じられました。
また地域の中核病院であります総合太田病院や他の介護関連施設の方々にもお集まりいただき、総勢175名ものご出席を頂きました。
まずはお力をお貸しくださいました同仁会の穂積理事長を始めとする皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。
(講演風景)
お話した内容としましては、
- 寝返りが出来ずに組織への血流がなくなった場合、わずか2時間で壊死が始まる
- 表面だけ見ても分かりにくいものなので、豊富な経験をもつ医師でも褥瘡の進行を正確に診断する事は難しい事が多い
- 表面が少しぐずぐずしているだけのように見えても潰瘍が骨まで達していることもあり、
場合によってはそれが引き金となり不幸な転機をたどることもある - 万有引力がある以上、いくらエアマットなどを使っても接触して重みがかかる部分がどうしてもあるため、
根本的な解決策にはならない - 特に褥瘡になりやすい腸骨(腰の周り)周辺を守るためには、足を四の字固めのように交差して枕などを挟む方法が良い
- かかとの褥瘡を防ぐには、ふくらはぎ全体で重みを支えられるように毛布を敷くことも有用
- 治療では表面を覆うタイプのものは細菌感染をひどくする原因となる事があり、
症状が軽いとはっきり診断できる場合以外には使えない - 潰瘍化して壊死した組織は掻き取り、潰瘍治療剤を使用すると回復が早いが、
適切な薬剤を選ばないと逆に進行させてしまうこともありうるので注意が必要 - 今までの褥瘡分類(†††度)は状態をうまく表現できない事が多く、現在の皮膚科学会では黒色期・黄色期・赤色期・
白色期と表現している
また疥癬については
- 使用する薬剤としては、試薬として販売されている効果の高いものがあり、それを使う事も有用である
- 介護・医療従事者の手洗いにはその試薬を希釈したローションを用いると簡便で感染の恐れがほとんど無い
- 疥癬は確定診断が難しいうえに痒みが強いので、
診断を誤ってステロイド軟膏を使用した場合かえって状態を悪化させてしまう事もある。
よって疑わしい場合には専門医による診断が必要
上記の内容でお話しさせていただきました。
今後も皮膚疾患についての正しい情報をお話できるような機会を多く持てればと考えています。