1. そもそも何? /喘息との関係は?
  2. 原因は? アレルーギーなの?
  3. 他に原因は?遺伝するの?
  4. 体質改善はできる?/大人になると治る?
  5. 治療は?/ステロイド外用は必要なの?
  6. ステロイドの使用の注意は?/ステロイドの副作用は怖い?
  7. 非ステロイド軟膏はどう使うの?/食事制限は必要?
  8. 民間療法をいろいろ試してみたいのですが?
  9. 生物学的製剤という選択肢
  10. プールってよいの? /石鹸やシャンプーの選び方は?
  11. その他日常生活上の注意点は?
  12. アトピーの人は白内障になる?/合併症で注意するものは?
  13. アトピー性皮膚炎で診察を受けるときにはどのようなことに注意すればよいでしょうか?
  14. アトピー性皮膚炎は怖い病気でしょうか?

1.そもそも何? /喘息との関係は?

アトピー性皮膚炎とは?

「アトピー性皮膚炎」という病名は、最近ではマスコミ等によってしばしば取り上げられるようになってきたため、 非常に一般的なものとなってきています。

ところがいざ「アトピー性皮膚炎とはどんな病気ですか?」と尋ねられると、専門家でも一言で明確に答えるのは容易ではありません。
現在のところはっきりしているアトピー性皮膚炎の特徴をまとめると以下のようになります。

  • アトピー性皮膚炎を引き起こす遺伝的な体質がある。
  • 湿疹が慢性に経過し治りにくい。
  • かゆみを伴い、かくことによって悪化する。
  • 子供に多く成人になるに従って軽快する傾向がある。
  • 各年齢によって病像に特徴がある。
  • 生活環境の中に病気を悪化させる要因がある。

なお「アトピー」とは「奇妙な」「とらえどころがない」という意味のギリシャ語です。
ですので、遺伝的な体質が深く関連した慢性で治りにくい湿疹である。と言えます。

アトピー性皮膚炎と気管支喘息の関係は?

アトピー性皮膚炎の人には、しばしば気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎が同時にみられます。

これらの病気では血液の中でIgE抗体というアレルギーに関連した成分が増加しているという共通の特徴を持っていることにより、 同じグループの病気として「アトピー性疾患」としてまとめて扱われることがあります。

ですので、アトピー性皮膚炎は気管支喘息と同時にみられることが多く、これらは「アトピー性疾患」 として一つのグループにまとめられる。と言えます。

2.原因は? アレルーギーなの?

アトピー性皮膚炎の原因は?

アトピー性皮膚炎の原因については、学問的にもいろいろな考え方があってまだよく解明されていません。
しかし湿疹を引き起こす要因としては「遺伝的な体質」と「環境的な要因」の両方があげられます。

「遺伝的な体質」としてはlgE抗体を産生しやすいという「アレルギー体質」と、皮膚の表面を保護している防御機構に間題があるとする 「バリヤーの障害」が考えられています。

また、「環境的な要因」としてもIgE抗体と結合してアレルギー反応を引き起こす「抗原」と、アレルギー反応では無関係に病気を悪化させる 「抗原以外の外的刺激」に大別されます。

ですので、アトピー性皮膚炎は「遺伝的な体質」十「環境的な要因」によって起こる。と言えます。

アトピー性皮膚炎はアレルギーですか?

前に述べた気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎は特定の抗原(ダニ、ホコリ、 花粉など)に対するアレルギーであることがはっきりしており、これらの物質に対するIgE抗体が気管支や鼻・ 眼においてアレルギー反応を引き起こし、症状が出現することが分かっています。

ところがアトピー性皮膚炎においてはIgE抗体がどのように関係しているのかはまだはっきりとは解明されていません。

アトピー性皮膚炎の原因としてアレルギーが大きく関っていることは間違いありませんが、 最近ではアトピー性皮膚炎における非アレルギー的異常についてもいろいろと分かってきています。

従ってアトピー性皮膚炎ではアレルギー反応のみで病気のすべてを説明することはできません。
ですので、アトピー性皮膚炎は他のアトピー性疾患と異なり、アレルギー反応のみで病気のすべてを説明できない。と言えます。

3.他に原因は?/遺伝するの?

アトピー性皮膚炎の原因としてアレルギー以外にはどのような異常が考えられていますか?

人間の皮膚の表面の角質という部分は、外界からの異物(ダニ、ホコリ、カビ、 細菌など)の侵入を防ぐバリヤーとしての機能を持っています。
以前よりアトピー性皮膚炎の人の皮膚は湿疹が認められない一見正常の部分でも乾燥してカサカサしていることが知られていましたが、 最近の研究で、アトピー性皮膚炎の人の皮膚の角層の成分の異常が見つかり、皮膚のバリヤーの機能が十分でないことが明らかになりました。

従ってアトピー性皮膚炎の人では、 皮膚のバリヤーとしての機能が弱いために外界からの刺激によって容易に湿疹を引き起こすのではないかという『非アレルギー的な異常』が考えられるようになってきました。

ですので、アトピー性皮膚炎は皮膚のバリヤーの異常を伴っている。と言えます。

アトピー性皮膚炎は遺伝しますか?

アトピー性皮膚炎そのものが遺伝することはありませんが、アトピー性皮膚炎を引き起こす「遺伝的素因」(体質)は遺伝します。 しかしその遣伝形式は複雑で両親のどちらかにアトピー性皮膚炎があっても、必ずしも子供に遣伝するわけではありません。

ですので、アトピー性皮膚炎を引き起こす体質は遺伝する。と言えます。

4.体質改善はできる?/大人になると治る?

アトピー性皮膚炎を根本的に治すためには体質改善が必要だと聞きましたが?

アトピー性皮膚炎を引き起こす体質は、親から引き継いだ遺伝子によって決まっていると考えられます。
しかしながら、アトピー性皮膚炎を引き起こす体質を決定している遺伝子はまだ見つかっていませんし、 その遺伝子を取り換えることは現代の医学では不可能です。

従って、残念ですが現在のところはアトピー性皮膚炎を引き起こす体質を根本から改善することはできません。
遺伝子を変えることができないからです。

「太りやすい体質」に置き換えて考えてみて下さい。
「太りやすい体質」の人をいくら食べても太らないようにすることはできませんが、 そういう人でも食事に注意を払い適度な運動を心がけることによって、太らないようにすることは可能です。

アトピー性皮膚炎の人でも「湿疹のできやすい体質」を変えることはできませんが、湿疹を引き起こすきっかけとなることを避けたり、 軽いうちに治療して悪化しないようにすることは可能です。

アトピー性皮膚炎の人では、湿疹のできやすい体質そのものの改善を考えるより、 湿疹を悪化させないことを心がけて対処することが実際的でしよう。ですので、アトピー性皮膚炎の体質改善は無理ですが、対処は可能。と言えます。

アトピー性皮膚炎は大人になると自然に治ると聞きましたが?

一般の人でも赤ちゃんの時の皮膚は最も刺激に弱く敏感で、成長するにつれて徐々に皮膚の抵抗力が増してくることが知られています。
アトピー性皮膚炎の人でも同様で、正常の人に比べて皮膚のバリヤーに障害があり、外的刺激に対して敏感であるという「遣伝的体質」 はすべての年齢を通じて続いているわけです。

しかし、それでも成長に従ってアトピー性皮膚炎の人なりに皮膚が少しずつ強くなってくるので、 普通の刺激ではほとんど湿疹ができなくなる程度に改善することが多いのです。
このような状況をもって一般的には「大人になって自然に治った」と言っているわけです。

しかしながら、一見治ったと考えられている人でもアトピー性皮膚炎の体質は残っているため、 はっきりした湿疹はできていなくても皮膚が全体的に乾燥している、手荒れがひどく治りにくい、 虫刺されがいつまでもかゆくしこりになって残るなどの皮膚のトラブルが形を変えて続いていることが多いようです。

また、子供の時の治療が不十分で、悪化した状態が慢性的に続いている場合には、成長によっても皮膚の抵抗力の改善がみられず、 成人型アトピー性皮膚炎に移行してしまうことが多いので、子供の時にきっちりと治療してコントロールすることが大切です。

ですので、アトピー性皮膚炎は一般に成長に従って軽快するが、その体質はずっと残っている。と言えます。

5.治療は?/ステロイド外用は必要なの?

アトピー性皮膚炎の治療は?

アトピー性皮膚炎の治療は、外用薬による炎症の改善と内服薬によるかゆみのコントロールが柱となりますが、 どちらかと言えば外用薬による治療の方が大切です。

症状の軽い場合は外用薬だけでも十分改善が見込めますが、 ある程度以上悪化すると外用薬に加えて内服薬によるかゆみのコントロールも不可欠となります。 それは悪化時にはかくことによって更に悪化するという悪循環が起こるからです。

時々軟膏を体に塗るのはめんどうだとかベタベタしていやだということを言う方がいますが、 残念ながらアトピー性皮膚炎の治療には外用薬は不可欠です。ただし、 見た目や使用感のよい軟膏を選ぶ事ができることもあります。

ですので、治療は外用薬中心で行なう。と言う事になります。

ステロイド外用剤は治療に必要ですか?

最近「ステロイドの塗り薬は副作用が恐いので、ステロイド以外の薬で治療して下さい」ということを言われる患者さんが増えてきました。
しかしステロイド外用剤はたいへん効果のある薬で、注意して使用すれば副作用もそれほど恐くありません。またステロイド外用剤以外の薬はそれほど効果がありませんので、 ある程度以上悪化した際にはステロイド外用剤を使用せずに改善させることは困難です。

ところがステロイド外用剤を使用しなかったり、急にやめてしまったりするために非常に悪化してしまう例が増えています。
ステロイド外用剤には以下のような特徴があることを理解して下さい。

  1. 最強のものから最弱のものまで多種類のものがあり、病気の程度や部位に応じて使い分けができる。
  2. 大部分が、使用した皮膚においてのみ作用するので、内服によるステロイド剤と異なり、 全身的な副作用の心配が殆ど無い。
  3. 皮膚における副作用も使用した部位に限られるため、副作用チェックが容易である。

ですので、ステロイド外用剤は治療に必要。と言えます。

6.ステロイド使用の注意は?/ステロイドの副作用は恐い?

ステロイド外用剤を使用する際にはどのような注意が必要ですか?

ステロイド外用剤を使用する際に一番大切なことは、指示された部位や回数などの使用法をきっちりと守ることと、 定期的に通院し医師の指示を受けることです。よく少し良くなったので自分の判断で中止したり、別の薬に変更してしまう人がいますがこれはよくありません。

湿疹の状態が良くない場合は、ある程度の期間強目のステロイド外用剤を使用して、かなり改善してから弱いものに変更するのが正しい治療法で、 あまり改善していない状態で効き目の弱いものに変更するとかえって長時間ダラダラとステロイド外用剤を使うことになってしまいます。

また逆に効果が強いからといって、どこにでも強いステロイド外用剤を自分の判断で使うのもよくありません。

特に通常顔には体の部位と別のステロイド外用剤が処方されていると思いますが、その指示を守るようにして下さい。
理由は顔の皮膚は薄く、体の皮膚と同じ強さのステロイドを外用すると副作用が強く出てしまう危険性があるためです。
ですので指示を守らないということは、せっかく治そうとしているのに自分で副作用を起こしてしまうようなものです。

また自分自身でも症状の程度と使われているステロイド外用剤の強さの関係をよく理解し、 徐々にステロイド外用剤の使い分けのコツを習得するようにして下さい。

その他の注意としては、皮膚に塗る時に強くこすって擦り込まない、ベタつかない程度に薄くのばす、 極端に強さの違う薬を続けて塗る場合には一旦手をよく洗うことなどです。

ですので、ステロイド外用剤は医師の注意をよく守って使用し、徐々に使い方のコツを自分でも習得するようにする。ことが大事です。

ステロイド外用剤は副作用が怖いと聞きましたが?

最近ステロイド外用剤は大変副作用の強い薬であり恐いとするマスコミ報道が増えています。
しかし、ステロイド外用剤は過去40年にわたって使用されている薬剤で、使用法さえ間違えなければ非常に良い薬です。

ステロイド外用剤の副作用としては

  1. 皮膚が萎縮し、血管が浮き出る。(顔面では赤ら顔になる)
  2. 感染を起こしやすくなる。(おでき、にきび、 たむしなどを起こす)などがありますが医師の指示を守って正しく使用すれば大きな問題となることはありません。

特に1.については最近のマスコミ報道では非常に強調された形で取り上げられていますが、 強いステロイド外用剤を長期にわたって使用しなければ簡単には起こりませんので

  1. 医師の指示通り、部位、回数を守って使用する。
  2. 定期的に診察を受け、皮膚の状態をチェックしてもらうようにする。

によって防げます。

ステロイド外用剤は正しく使用すれば安全で非常に良い薬で、アトピー性皮膚炎の治療には不可欠であることをもう1度よく理解して下さい。
ですので、ステロイド外用剤の副作用は正しく使えば恐くない。と言えます。

7.非ステロイド軟膏はどう使うの?/食事制限は必要?

ステロイドの入っていない外用剤(非ステロイド外用剤)はどういう時に使いますか?

ステロイドの入っていない外用剤の効果は弱いので、一旦ステロイド外用剤で改善させた後にごく軽い湿疹の部分に対してや皮膚の乾燥を防ぐ意味(この場合保湿剤と呼ばれます)で使用するのがよいでしよう。

また、ステロイドの入っていない外用剤は全く副作用が無くて安全と一般に信じられていますが、そんな事はありません。
かぶれを引き起こしてかえって悪化されることもあるので,症状の変化があった際にはすぐに医師に相談することが必要です。

ですので、非ステロイド外用剤はステロイド外用剤で軽快した後に使用する。事がほとんどです。

食事の制限は必要ないのですか?

私たちは、食事制限は原則として必要無いと考えています。

その理由は

  1. 一般に食事制限はほとんど効果が無いことが多い。
  2. 成長期の子供では食事制限による成長障害、栄養失調が問題となる。
  3. 食事制限による精神的ストレスが悪化の原因となる。

などです。

ある特定の食べ物で明らかにくり返し悪化がみられる場合以外は、食事制限の必要はありません。
むしろ、偏った食事を避け、栄養のバランスの良い食事を取ることを心掛ける方が大切です。

なお、かゆみが強い時には刺激物を避けることが必要です。
ですので、食事制限は原則として不要。と言えます。

8.民間療法をいろいろと試してみたいのですが?

ステロイドの入っていない外用剤(非ステロイド外用剤)はどういう時に使いますか?

民間療法をすべて否定するわけではありませんが、民間療法の中にはかなりいいかげんなものや、詐欺に近いもの,金儲け主義のものがかなり多く混じっていることは事実です

従ってマスコミの紹介や過剰な宜伝にまどわされることなく、冷静に判断することが大切です。
民間療法だけでアトピー性皮膚炎が完全に治ってしまうことはまずありませんので、補助療法として従来の治療を続けながら試みることを考えて下さい。

またその際は、必ず主治医の先生とよく相談してから開始するようにして下さい。

「アトピーにいいかもしれないもの」は何でも試してみていると言われる人がいますが

「アトピーにいいかもしれないもの」は「アトピーをすごく悪化させるもの」であるかもしれないことを忘れないようにして下さい。

ですので、民間療法はあくまで補助療法。とお考え下さい。

9.生物学的製剤という選択肢

ミチーガ

アトピー性皮膚炎の注射薬に新しい仲間が加わりました。ミチーガというmade in Japanのお薬です。
ミチーガ皮下注用60mgシリンジ(有効成分:ネモリズマブ)は、アトピー性皮膚炎の「かゆみ」をターゲットとした生物学的製剤です。

  • ミチーガの適応

ミチーガは全てのアトピー性皮膚炎の方が使用できるわけではありません。
従来のアトピー性皮膚炎の治療薬である炎症をおさえる塗り薬(ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等) および抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使用して、治療を一定期間行ってもかゆみが改善しない13歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さんが使用できます 。

  • ミチーガの治療方法と医療費

通常4週間ごとに1回、皮下注射します。

医療費は保険適応となり、3割負担の方で1回、約36000円となります。
※他薬剤等が処方された場合は別途費用がかかります。

<ミチーガ使用中の注意事項>
ミチーガはかゆみを治療する薬であり、かゆみが改善した場合もアトピー性皮膚炎に対する治療は必要です。 具体的には、アトピー性皮膚炎の湿疹の状態に応じて抗炎症外用剤を併用します。また、湿疹が改善傾向にあるときにも必要な治療は継続します。

<ミチーガの副作用>
主な副作用は、感染症(ヘルペス感染症、蜂巣炎、膿痂疹、上気道炎)、皮膚状態の悪化、過敏症、注射部位の症状(内出血、赤み、腫れ)です。

かゆみはアトピー性皮膚炎の症状の中でも辛い症状の一つです。新しい治療薬としてミチーガが加わる事で、アトピー性皮膚炎の治療の選択肢がさらに広がりました。

デュピクセント

デュピクセントとはアトピー性皮膚炎の肌荒れやかゆみの原因になる伝達物質をブロックする注射薬です。

  • デュピクセントの適応

2023年9月25日、生後6ヵ月以上の小児のアトピー性皮膚炎の適応が承認されました。

日本で初めて生後6ヶ月から小・中・高校生、全年齢のアトピー性皮膚炎に適応を有する生物学的製剤となります。

  • デュピクセントの用法用量

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イブグリース

バイオテクノロジーの技術を使い開発された注射薬で、アトピー性皮膚炎の原因となる体内の成分「インターロイキン」に結合し、その働きを抑えます。

  • インターロイキンとは?

アトピー性皮膚炎は、免疫に関係する細胞たちが、色々な成分を放出することによって起こったり、悪化したりすることがわかってきました。インターロイキンはその成分の1つで、かゆみを引き起こしたり、皮膚のバリアを弱めたりする作用があります。

  • イブグリースの適応と用法用量

通常、成人及び12歳以上かつ体重40㎏以上の小児には、レブリキズマブ(遺伝子組換え)として初回及び2週間後に1回500㎎、4週以降、1回250㎎を2週間隔で皮下投与します。なお、症状の状態に応じて、4週以降、1回250㎎を4週間隔で皮下投与することもできます。

 

10.プールって良いの?/石鹸やシャンプーの選び方は?

プールで皮膚を鍛えればよいと言われましたが?

プールの水には殺菌のための塩素が入っていますので、プールに入った後にアトピー性皮膚炎が悪化することがよく経験されます。
またプールで皮膚を鍛えたからといってアトピー性皮膚炎がよくなるわけではありません。

アトピー性皮膚炎の人でも体を鍛えたり、気分転換のためにプールで泳ぐことも必要と思いますが
以下の点に注意して下さい。

  1. 湿疹の状態の良くない時にはプールに入らない。
  2. プールから出た後は必ず普通の水で体全体をよく洗う。
  3. 皮膚の状態に応じてすぐに薬を外用するようにする。

総じて言えば、アトピー性皮膚炎にはプールはあまりよくない。と言えます。

石鹸やシャンプーはどのようにして選べばよいでしょうか?

石鹸やシヤンプーは、特別な香料や消毒剤の入ってないごく普通のものをまず使用するようにして下さい。
薬用石験には皮膚を刺激するような成分が入っているのであまりよくありません。

また体を洗う際には,柔らかいタオルかガーゼを使用し、強くこすりすぎないようにして下さい。
症状が悪化している場合は、あらかじめ石鹸をあわだてておいて、両手のひらでそっとマッサージするようにして洗うようにして下さい。

洗った後、よくすすいで石鹸やシヤンプーを完全に洗い落すことを心がけて下さい。
通常の石鹸を使用して悪化するようでしたら,低刺激性のものを試みるのもよいでしよう。

ただし、低刺激性のものは洗浄力が弱いので初めから低刺激性のものを使用することはあまりお勧めできません。

ですので、石鹸やシヤンプーは普通のものを中心に。お使いください。

11.その他日常生活上の注意点は?

 

アトピー性皮膚炎ではかくことによって悪化しますので、できるだけかかないようにすることが大切です。
あまり神経質になるのもよくありませんが,最低限以下のことを心がけて下さい。

  1. ストレスを避け、規則正しい生活を心がける。
  2. 刺激の少ない綿の下着を使用する。
  3. 爪を短くする。
  4. 部屋を清潔にすることを心がける。
  5. 汗をかいた後やホコリっぽいところにいた後はシャワーを浴びる。
  6. 入浴時には石鹸を使用して体をきれいに洗い、よくすすぐようにする。また長時間の入浴や熱すぎる湯をさける。
  7. 外から帰った時は手や顔をよく洗う。
  8. ペットはできるだけ飼わない。

アトピー性皮膚炎を悪化させる因子は、それぞれの患者さんで異なります。
従って患者さん自身で自分の病気を悪化させる因子を生活の中から注意深く見つけだして、それらを避けるようにすることが大切です。

神経質になりすぎて、自分の行動を制約しすぎたり、常に気を配りすぎてイライラするのはつまらないと思います。
生活を楽しみながらアトピー性皮膚炎をうまくコントロールするようにしましょう。

やはり痒くてもかかないようにすることが大切。その他最低限の注意は必要。と言えます。

12.アトピーの人は白内障になる?/合併症で注意するものは?

アトピー性皮膚炎の人に白内障が起こりやすいと聞きましたが?

アトピー性皮膚炎の人に、しばしば白内障(眼の水晶体というレンズが白くなって濁ってくる病気)を合併することが知られています。

その原因はアトピー性皮膚炎の湿疹が眼の周囲に起こった際に、かゆくて眼をこすったり、 眼の周囲の炎症が水晶体に波及するためと考えられています。また同じような機序で網膜剥離が起こりやすいことも知られています。

従って、顔面のアトピー性皮膚炎に対しても十分な治療をし、炎症のコントロールをすることが大切です。

ですので、顔面のアトピー性皮膚炎のコントロールがよくないと白内障になることもある。と言えます。

白内障以外にはどのような合併症が多いでしょうか?

アトピー性皮膚炎の患者さんでは、とびひ(伝染性膿痂疹)、みずいぼ(伝染性軟属腫)、 重症の単純ヘルペス感染(カポジー水痘様発疹症)などの皮膚の感染症が起こりやすいことが知られています。

従って、アトピー性皮膚炎の治療中にいつもと様子がちがった症状がでた場合には、すぐに主治医に相談するようにして下さい。
アトピー性皮膚炎では皮膚の感染症が起こりやすいので注意。してください。

13.アトピー性皮膚炎で診察を受けるときにはどのようなことに注意すればよいでしょうか?

アトピー性皮膚炎の治療に際しては

  1. 皮膚の状態が良くても悪くても決められた日に定期的に通院する。
  2. 症状の経過や治療の結果をきっちりと医師に伝える。
  3. 悪化したきっかけとして思い当たることがあれば医師に伝える。

などの注意が必要です。

悪化したときだけ来院する人やろくに皮膚を見せずに「いつもの薬がもらえればいいです」と言う人がいますが、 長期的に正しい治療方針を立てるためは、医師はいい時の状態をきちんと把握しておく必要もあるわけです。

決められた日にきっちりと通院することが大切。といえます。

14.アトピー性皮膚炎は恐い病気でしょうか?

アトピー性皮膚炎の原因は?

アトピー性皮膚炎の原因については、学問的にもいろいろな考え方があってまだよく解明されていません。
しかし湿疹を引き起こす要因としては「遺伝的な体質」と「環境的な要因」の両方があげられます。

「遺伝的な体質」としてはlgE抗体を産生しやすいという「アレルギー体質」と、皮膚の表面を保護している防御機構に間題があるとする 「バリヤーの障害」が考えられています。

また、「環境的な要因」としてもIgE抗体と結合してアレルギー反応を引き起こす「抗原」と、アレルギー反応では無関係に病気を悪化させる 「抗原以外の外的刺激」に大別されます。

ですので、アトピー性皮膚炎は「遺伝的な体質」十「環境的な要因」によって起こる。と言えます。

アトピー性皮膚炎はアレルギーですか?

これまで書いてきたことをまとめると,アトピー性皮膚炎は正しく理解して治療すれば決して恐くない病気であることがおわかり頂けたと思います。

恐いのは、いろいろな情報にまどわされて、アトピー性皮膚炎を誤解して誤った対処をすることです。

アトピー性皮膚炎は決して命に関る病気ではありませんが、この病気をひどくしてしまったために仕事や学校を辞めてしまったり、 対人関係がスムーズにいかなくなって精神的に落ち込んでしまったりする人も数多くいます。

最近では「ステロイドを塗っているととんでもないことになる」 と言ってアトピー性皮膚炎の患者さんの心の迷いにつけこむ悪徳商法も増えています。

しかし本当に恐いのはいろいろな情報にまどわされて自分の人生をおかしくしてしまうことです。

アトピー性皮膚炎を正しく理解して冷静に対処し,じっくと治療に取り組むようにして下さい。
私達もそのお手伝いをさせて頂きます。

アトピー性皮膚炎は恐くない!と言うことです。