2004年6月23日に太田市立休泊小学校さんのPTA会員勉強会で当院の野口がお話しをさせていただきました。

この勉強会の内容が上毛新聞に掲載されました。
一人でも多くの方に水いぼを取る事の意義の少なさをご理解いただければと思います。

私たちは現在、水いぼに関して一つの同意を得る目的で太田市内各地でお話しをさせていただいています。
休泊小学校さんにおかれましては私たちの考えをご理解いただき、このような場を下さり感謝しております。

太田市立休泊小学校さんは太田市中心地からすこし東の龍舞町に位置しています。そこは住宅が増えている地区にあたり、
今では生徒数も市内随一です。
増築をされた際に内装も大幅に変更し、全国区でも有名な建築の一つとなり、見学依頼も多いとのことです。
確かに校舎内の螺旋階段を始めとして、私の印象にある「小学校」の内装イメージとはかなりかけ離れています。
新しい試みが繰り広げられている学校なのだと感じました。

当日は保護者の皆様・先生方およそ60名程ご参加いただき、真新しい多目的室の中、「子供の皮膚の話し あれこれ」
というテーマで野口からお話しさせていただきました。

皮膚のバリア機能について
  1. 皮膚は外界からの異物侵入に対するバリアであるとも言える。その機能を果たす表皮の状態を健やかに保つ事は非常に大切である。
  2. 環境要因によりそのバリア機能が落ちると外部からの異物の侵入が容易になり、皮膚炎の原因となる。
    その原因を除去しない限り治療は出来ない。
    例えば髪の毛が原因の場合には床屋さんが治療するケースもありうる。

    (消化されてしまった口の周りの皮膚が痛々しい症例写真)
  3. 異物が侵入すると、免疫機能が(人体を国に例えるとちょうど軍隊のように)働き、炎症反応を起こして異物を破壊する。

    その機序を考えると薬剤で免疫反応の一部分を抑える事よりも、皮膚のバリアを強めてそもそも免疫反応が起こらないよう、
    異物の侵入を抑える事、つまり皮膚を健やかに保つ事が大切。
    (野口の勧める体の洗い方は 乾燥性湿疹のページ をご覧ください)

「アトピーとステロイド」について
  1. 「アトピー性皮膚炎」という言葉が乱用されている。
    湿疹ができればすぐに「アレルギーかしら?」と検査を申し込む保護者もいるようだが、小児の血液検査では「卵白アレルギー陽性」
    などの結果が出ることも多く、臨床的な状態と直結する事の方がむしろ少ない。
    実際に野口が以前3歳†7歳の小児で行った検査では、全くアレルギー症状(喘息・皮膚炎・結膜炎・鼻炎等々)
    がない人にもアレルギー反応が強く出るケースがおよそ3割あり、試験管の中と体内の反応の違いがはっきりと分かった。
    食べ物で臨床的にアレルギー反応が出る人も中にはいるが、そのようなケース以外での食物制限は体・精神の発育上お勧めはできない。

    血液検査をすぐに勧める医療機関もあるようだが、上記理由よりあまり意味が無く、また医療費の増大につながる行為でもあり問題である。

  2. アトピー性皮膚炎と言われて来院した患者さんの中には単に石鹸の使いすぎで皮膚のバリアが壊れているだけの人も多い。

    そんな人の場合には体の洗い方を指導するだけで良くなる場合がほとんどである。

  3. またどうしてもアトピー性皮膚炎という診断名をつけなくてはならない場合もある。そのような場合、強い炎症はきちんと抑え、
    治まったら維持し、その子の皮膚が加齢とともに厚くなり、症状が自然に治まるのを待つことになる。
  4. 以前TVで久米さんがステロイドに対して誤解を招くような発言をしたが、その言葉に踊らされ、
    ステロイドを使うか使わないかでその医師を評価する事は無意味である。
    皮膚科専門医はきちんと診断して症状・部位・面積・経過などを考えて使い分ける。
    それができるのも大学病院等で長期大量投与による皮膚の萎縮などを覚悟の上でステロイドを使用せざるを得ない症例を経験して、
    「どんな部位に、どのくらいの強さの薬を、どれくらいの期間塗ったら皮膚がおかしくなるのか」を理解しているからである。
  5. そのような医師が使えばステロイドは決して恐ろしい薬ではない。
    状態によっては強力な薬を短期間使用して一気に通常に近い状態に持っていく場合もある。
    しかし使い慣れていない、
    つまりステロイドによる皮膚の萎縮などを経験していない医師が弱いステロイドを長期間に渡り使用したりしたほうが全身・
    皮膚への影響が大きい。
  6. またアトピー性皮膚炎の患児からしてみれば、毎晩毎晩痒さで目覚めてしまう苦痛、
    またそれを連日訴えることを家族へ遠慮してみたり、睡眠不足を抱える事となり、「自分がいる事で家族に迷惑をかけているのでは・・」
    のようにネガティブな方向に走ってしまうこともある。
    さらにそのストレスから症状を悪化させてしまう事もあるようだ。
    よってステロイドを使うべきときに使わないと患児の精神的な問題にまで発展してしまう可能性があると言える。

    (肘の湿疹の症例写真:角質が薄く湿疹になりやすい)
  7. アトピーに対していろいろな営利目的の業者が「アトピービジネス」といわれるような詐欺まがいの行為を行っている。

    「この・・・を3年間飲んでアトピーが治った!!」 等のチラシを目にすることがあるが、医学的に考えると3年で皮膚が厚くなり、
    症状が出なくなったと考えるほうが自然なことがほとんどのようだ。
    民間療法を完全に否定するわけではないが、語弊を恐れずに極論すると、
    皮膚が厚くなるまでの期間に毎日コーラを飲んでいても症状は消えていったとも考えられる。
    (アトピーに関してはアトピー性皮膚炎のページをご参考にしてください)

皮膚に現れる感染症について
  1. 以前野口が行った調査によると、とびひの菌と鼻くその菌はおよそ8割の症例で一致した。
    その調査の中ではMRSAが1割程度も検出されたため、全身に薬剤が行き渡り常在菌を殺してしまう経口抗生物質よりも、
    病巣に直接塗ることができるイソジンを塗り、患部を覆うことが基本。
  2. ヘルペスウイルス感染症(水痘など)、風疹と麻疹、またリンゴ病について、特徴と簡単な見分け方を説明。
    特に風疹・リンゴ病(伝染性紅斑)については妊婦さんに感染してしまうと胎児に取り返しのつかない悪影響を与える事が多いため、
    注意が必要。気になる場合には血液検査で抗体価を調べ、場合によっては予防接種も有用。
  3. 水いぼを取るべきか否か、学会の流れや歴史的経緯、免疫学的根拠とともに説明。

上記の内容でお話しさせていただきました。
水いぼとそれにまつわる今までの流れ・治療方法についてはこちら(水いぼについて